けちられる年金

 桜が咲き誇り、浮かれ気分の春だというのに、今年は高齢者にとって憂鬱(ゆううつ)な季節となりそうだ。4月(6月支給)分から公的年金が引き下げられる一方で、多くの市町村で65歳以上の介護保険料が値上げされる。入るは細り出(い)ずるは膨らんで、それでなくとも心細い年金生活をさらに不安にする▼厚生年金の標準的な受給月額(夫婦2人)は0.1%、228円減って22万496円となる。現役世代の賃金が減っているのに合わせるためではあるが、「この程度なら」と軽くみていると、後で慌てることにもなりかねない▼「えげつないルール変更」と野党関係者は指摘する。下げ幅で賃金が物価を上回った場合、物価に合わせていたのを、賃金に変更するなどの細工が仕組まれたからである。今後、減額幅が拡大されて、長期化する可能性もある▼今回の減額は、コロナ禍以前の賃金低迷を反映したものだが、コロナによって打撃を受けた賃金の影響はこれから効いてくる。一体、今後どれくらい減らされていくのか。物価や賃金の動向を踏まえると、2022年度は標準世帯で現在に比べ、月約2200円減額という試算もある▼物価や賃金に連動させながら実質的な生活水準を維持する年金制度は、受給者に対して「できるだけケチる」改変が目指されている。世代を超えて年金制度を末永く支え合うためと春風に諭されても、ちっとも春らしくない。(前)

2021年3月31日 無断転載禁止