世事抄録 2021年「春よ、来い」

 昨年の2月3日、大型クルーズ船が横浜港に入港した。それは開国を迫る黒船と真逆な閉鎖の始まりだった。海に囲まれた日本では容易なことに思えた。ところが観光立国を目指す政治経済にとって、オリパラ開催は必須だった。拡大する感染者数に国民は委縮した。そこにマスク不足が追い打ちをかけ、移動を控えるよう通知が出た。オリパラは延期となる。安全か経済か、自己管理と救済処置を繰り返し、今年も緊急事態宣言の中、春が来る。

 飲み屋を閉めテイクアウトの店を開くと案内があった。安いが、と仕事の依頼が来た。農業は待ってくれんとの便りもあった。可能性を求め、仕事を分け合い、自然と向き合う。そして地方に引っ越す者もいる。会社を閉めた者もいる。一からだと言う。コロナ2年目の春が来る。

 思えば春に出会いと別れはつきものだ。卒業式に入学式、新年度に異動や転勤。そこには新たな生活が待っている。コロナで旅立つ者には、目的と家族や社会のために選択した矜持(きょうじ)がある。迎える人はそれを知っている。

 コロナで学んだのは、不満や諦めだけでない。政治の流れを見て、何が大切で、どう生きるかも学んだ。身の回りから何をすべきか、どう変わるか。事も興した。耐えるだけでなく創意工夫が重要だと体で感じた。思考を閉じ込めるのではなく、仲間や地域とどう生きるか心を開放して歩き出そう。2021年の「春よ、来い」。

 (埼玉県在住、島根県奥出雲町出身・鬼灯)

2021年2月18日 無断転載禁止