ポツンと一人の政党にも

 中選挙区制時代の衆院選で鳥取県は旧社会党の存在感がひときわ大きかった。1970年代から93年にかけて行われた8回の選挙のうち、4回は同党から2人の当選者を出し、定数4議席を自民党と分け合った。筆者も当時の選挙戦を取材したが、「また、社会党と引き分けかいや」と吐き捨てるような自民党県連幹部の口ぶりは、敗北宣言に近かった▼2人当選の原動力となったのは、労働組合を中心とする組織票の絶妙な配分。常連となった2人の候補者には、まるで量ったように得票が分けられ、112票差でともに当選したこともある。予定調和を導くお家芸は「神の手」を思わせたが、その手元が少しでも狂うと、どちらかが落選したはずだ▼昔話をしても詮(せん)無いことと思いつつ、社会党を前身とする社民党の命運が気になる。立憲民主党に合流するため、国会議員などの離党を認めることになり、実質的に党は分裂、というより限りなく消滅に近い▼かつて衆参合わせて250議席前後を擁した大所帯は、政党の離合集散の渦に散り散りとなり、結党75年を迎えた今や国会議員4人のわび住まい。今回の離党容認で離党者が相次ぎそうで、「ポツンと1人社民党」も目前▼護憲・リベラルの老舗が廃業の崖っぷちに立たされている。旧社会党の正統派後継者の看板は細っても野党らしい野党の精神は健全であってほしい。自民党の薬にもなる。(前)

2020年11月20日 無断転載禁止