「仕事したい」「諦めの気分」 パリ在住の島根出身者

 欧州で新型コロナウイルスが再び猛威を振るっている。フランスでは夜間の外出禁止が発令され、先月30日から1カ月間、全土で外出を禁止するロックダウン(都市封鎖)が始まった。首都・パリで暮らす島根県出身者は、感染拡大を「自由」を求める文化と政府の中途半端な対応の影響と指摘しつつ、一刻も早い収束を祈っている。

 出雲市湖陵町出身の今岡ラフエンテ優さん(31)が勤務するパリのホテルは9月、半年ぶりに営業を再開したが、ほどなく休業に追い込まれた。基本給の7割は国から支給されるため、生活で困ることはないとしつつも「好きでやっている仕事なので一日も早く戻りたい」と切に願う。

 10月には弟の結婚式に合わせて帰国する予定だったが、式が中止になり、フランス国内の感染状況も踏まえて帰国を断念した。「精神的にこたえた。日本にいつ帰れるのか」と不安がつきまとう。

 現在、フランス全土の感染者は1日に4万人超のペースで増加している。街中で無料のPCR検査が受けられることも影響しているが、陽性率や集中治療室(ICU)の収容率が上がっており懸念の声が上がっているという。

 今岡さんは感染拡大を人と人の距離が近い文化が一因だと考える。現地では接触を避けるよう呼び掛けられてはいるが、近しい間柄でのハグやキスのあいさつは今も当たり前。約5週に1度ある10日余りの休暇は、旅行や食事会を楽しむ人が多いという。

 外国からの入国規制も緩く、政府発行の特別入国審査用紙の提出は9月になってようやく始まり、それまでは遠方からでも自由に入国できていた。出雲市多伎町出身でパリ島根県人会会長のフローランタン柳楽桜子さん(58)は「基本的な事がなぜ実施されないのか不思議だ」と驚く。

 先月30日に始まったロックダウンも実際には規制が緩く、過去にクラスター(感染者集団)が発生し、亡くなる人も多い高齢者施設への訪問は可能との方針が示された。オンラインでの手続きで、迅速に所得保障を受け取ることができるなど社会保障が充実する分、政府の本気度が見えない新型コロナ対策に「感染が拡大するのも無理もない。いわば諦めのような気分だ」と率直な気持ちを明かした。

2020年11月4日 無断転載禁止