出張散髪再開に入所者笑顔 面会禁止の介護施設 松江

会話は控えめにして、手際よく髪を整える田辺明光さん(左)=松江市鹿島町名分、鹿島病院
 新型コロナウイルスの影響で、介護施設に外部の立ち入りが困難になっている。理容師による散髪の出張も一時は自粛していたが、利用者の衛生、精神両面を勘案して、施設側と理容師側の双方が合意することで活動が再開した。施設内で理容師は、職員と家族以外の人で触れ合える、貴重な存在となっている。

 10月下旬、松江市鹿島町北講武の特別養護老人ホーム「あとむ苑」。ベテランの田辺明光さん(65)=松江市西持田町=はじめ4人の理容師が、寝たきりや車椅子の利用者12人を短時間で手際よくカットした。髪をさっぱりと短くしてもらった90代女性は「久しぶりだね。ありがとう」と笑顔を見せた。

 あとむ苑は感染防止のため面会は4月から原則禁止にし、窓越しや玄関での面会を事情に応じて対応している。散髪の受け入れは8月から再開した。大間恒子施設長は「来られない時期は髪が伸びきってしまった。外に出られず、交流が減っているので1カ月に1度、来て頂けることがありがたい」と感謝する。

 田辺さんが支部長を務める島根県理容生活衛生同業組合松江橋北支部は、8月から施設や病院への出張を再開し、多い時は1日100人近くをカットする。

 田辺さんは「髪が伸びても命には関係ない。でも、元気でいるかなと心配だった」と自粛期間を振り返る。出張を中止した3カ月間で衛生上、好ましくないほど髪が伸びた利用者や患者もいた。

 理容師たちは体調管理に細心の注意を払い、少しでも感染のリスクを減らすため短時間で仕上げる。鹿島病院(松江市鹿島町名分)の川谷清美看護部長は「年を取っても髪の毛は大事だ。入院生活のメリハリになっている」と活動の再開を歓迎する。

 田辺さんは休みの日を利用し、40年近く活動を続けている。「顔見知りになっていくことがうれしい。プロの技で気持ちよくなってもらいたい」と、中断を経て感じた活動の意義をかみしめながら施設を回る。

2020年11月2日 無断転載禁止