いのちの電話、回線パンク状態 コロナ相談増と人出不足

息をつく間もなく電話を受ける、島根いのちの電話の相談員
 電話の向こうから打ち明けられる悩みに相談員が寄り添う島根いのちの電話(松江市東津田町)の回線がパンク状態に陥っている。新型コロナウイルスの流行で不安が広がり、相談件数が増加。1件当たりの相談も長くなった。以前から人手不足の課題があり、電話応答率は1割未満にとどまる。主にボランティアや寄付による運営が限界に近づいている。

 「宝くじに当たったかのような気分です」

 ある相談員は受話器の向こうで悩む人から率直な気持ちを明かされた。2回線ある相談電話は、受話器を置いた瞬間、新たな着信が入る。石橋裕子事務局長は「実際の応答率は7、8%しかない」と厳しい現状を説明する。

 事務局によると、相談総数は平年並みで推移するが、新型コロナに関する相談が今年は3~8月で612件を数えた。1人当たり平均30分程度だった相談時間が大幅に延び、コロナ禍以降、2時間に及ぶことも珍しくない。4~9月にあった相談のうち、自殺の恐れがある内容は29.0%と、前年の同時期と比べると4.7ポイント増加した。

 ベテランの女性相談員(76)は「コロナで居場所を失った人や、つながりを求める人が非常に多い」と憂う。夏以降、全国的に自殺者が増加しており、「今こそ私たちの出番で、どんどん相談してほしいが、応えきれないもどかしさがある」と悔しがる。

 1979年に創設した島根いのちの電話は当初、相談員の中心が主婦だった。共働きの世帯が多くなるにつれ、ボランティアで十分な研修を受ける必要がある相談員の希望者が減った。1999年に123人いた相談員は91人となり、年齢層は60代以上が7割を占める。運営費の多くは寄付や相談員の会費で賄っており、研修費の確保も課題になっているという。

 鳥取いのちの電話も同様の課題を抱えており、瀧田親友朗理事長(83)は「新型コロナによる社会不安で自殺傾向が増えている。体制を拡充したいが難しい」と話す。

 島根大医学部精神医学講座の稲垣正俊教授(精神医学・自殺予防)は、自殺の行動に至るまでの「葛藤時間」が30分から1時間と指摘し、「ぎりぎりの時間に傾聴、相談できる重要な窓口だ」と存在意義を強調する。その上で「活動を拡充できるよう理解と賛同を広げる社会的な支援とともに新たな組織づくりの検討が必要だ」としている。

2020年10月27日 無断転載禁止