食事進まず、反応鈍く 保育士のマスクで子どもに変化
「あーん」「もぐもぐ」「がじがじ」。保育士が食事の際、声を出しながら手本を見せると、子どもは動きをまねて食べ物をかむ。
日常的な保育の一場面で、保育士がマスクを着けると食べ方が伝わらずに進みが遅くなり、うまくのみ込めないケースがある。
松江市八幡町のわかたけ保育園では食事の問題以外にも、保育士の問いかけに子どもが不思議そうな表情を見せるようになった。
このため、他の施設を参考に、7月上旬から日中の保育でマスクを外している。竹内多寿子園長は「新型コロナは怖いが、子どもの大事な時期に関わっている。『コロナだから近寄らない、触らない』では、発達の基盤が失われる」と表情が持つ役割を痛感している。特に幼いほど表情を通じたコミュニケーションが大事になるという。
同市内中原町のしらとり保育所では、マスク着用を徹底しながらも、0歳児クラスの食事では、フェースシールドを着用している。口元の形が見えるため、子どもは口の開け方をしっかり見るようになった。
別の施設では「顔が見たい」とマスクを取ろうとする子どもに、保育士がマスクをずらして表情を見せて気持ちを和らげている。
松江市は保育施設に対し原則マスク着用を呼び掛ける。一方で、子どもたちの発達の影響を心配し、市に相談があった施設には、マスクを外す際には換気や消毒などをするよう指導している。
乳幼児の保護者は意見が分かれる。松江市内の医療従事者の女性(33)は「健康第一。感染リスクがあるうちは、マスクをしてくれた方が安心だ」とするが、出雲市内の会社員女性(33)は「伸び伸び育ってほしいからマスクなしに賛成する」と、マスクを外す方針に理解を示す。
マスク着用の判断の答えは一つではなく、委ねられる施設の負担感は増している。
2020年10月16日 無断転載禁止