地域支えた産業遺跡を克明に ブックレット発刊

日野町が初めて発刊したブックレット「鉄山師近藤家と都合山たたら」
 たたら製鉄で栄えた日野町根雨の鉄山師・近藤家と、県史跡の都合山たたら跡(鳥取県日野町中菅)をテーマに、県内外の3人の研究者が執筆したブックレットが、発刊された。一般の人の興味を引き、地域経済の礎となった産業遺跡の実像に迫る学術書。町は県立図書館などに寄贈するほか、希望者には1部500円で提供する。

 県内随一の鉄山師と呼ばれた近藤家は、近世、近代を通じて多数のたたら製鉄を操業。洋鉄が市場を席巻するようになる明治維新以降も、和鉄生産の技術革新を進めた。

 一方の都合山たたらは近藤家が1889(明治22)年から約10年間経営した遺構。操業当時、浜田市出身の冶金(やきん)学者・俵国一博士(1872~1958年)が実地調査し、緻密な図面など貴重な文献資料を残している。

 ブックレットは、町の作成委員会が「日野町誌~続編」(2019年刊行)に盛り込めなかった内容を補完するために計画。都合山の発掘調査などを手掛けた角田徳幸氏(島根県埋蔵文化財調査センター調整監)、たたら研究者の加地至氏(元岡山県立高校教員)、近藤家の製鉄事業に詳しい池本美緒氏(鳥取県立公文書館専門員)に協力を求め、編集作業を進めていた。

 A5判、117ページで、近藤家のたたら経営や都合山たたらと地域社会など4章で構成。近藤家の系図や操業たたらの一覧、遺構構造、鉄山師が労働者(流し子)を手配する村人に無利子で前貸しする砂鉄先金、操業従事者の賃金などの資料も紹介されている。

 同委員長を務めた生田進教育長は「専門的な内容だが、たたら製鉄の実相を学び、知る良書。ぜひ、多くの人に読んでもらいたい」と話している。

 問い合わせは、日野町教委、電話0859(72)2107。メールアドレスkyouiku@town.hino.tottori.jp

2020年9月25日 無断転載禁止