世事抄録 静かなファシズム

 1年で破綻したアベノミクスに始まり、珍妙なアベノマスクに終わった“改憲幻想”の安倍政権。しかし後継の菅義偉首相が名実ともに居抜き内閣として新装開店したので、政策や政治路線はほぼ変わらないだろうと予想はつく。あの田中真紀子さんが「安倍家の生ごみのバケツのふた」と評したせいか、モリカケ・桜・選挙買収がうやむやにされる腐臭まで感じてしまう。

 それなのに退陣表明した安倍内閣の支持率は、直後の共同通信社の世論調査で56・9%と1週間前より21ポイント近くも増加した。この日本国民の政治感覚をどう理解すればいいのか? 戦時中は嘘(うそ)の大本営発表に熱狂しながら焦土の敗戦後、「軍部に騙(だま)された」と戦争責任を置き去りにした性根は少しも変わっていないらしい。

 とかく歴史は繰り返す。1929年の世界大恐慌が飛び火した30年代の昭和恐慌は、第1次世界大戦の戦争バブル崩壊が引き金だった。今は長期デフレと消費増税による庶民の貧困をよそに官製の株バブル、大都市圏は不動産バブル。コロナ恐慌は目前とみられ、40年「幻の東京五輪」と同じく2020五輪は風前のともしび。あまりにも似すぎていて怖くなる。

 世論の反応やマグマのような悲鳴の蓄積に静かなファシズムを予感する。その導火線が新政権の向こうに見え隠れしないか、今度は騙されたでは済まないはずだ。

(松江市・風来)

2020年9月24日 無断転載禁止