世事抄録 ささやかなる願い

 3月の本欄で、今年の暖冬について「天変地異のプレリュードか」と書いたら、新型コロナウイルスに地球が乗っ取られてしまった。世界中が疲弊している。

 趣味は録画した映画鑑賞に音楽鑑賞、読書と、元来インドア派で、家にいるのは苦にならない人間だが、こうも外出がはばかられる生活が続くと、だんだん過ごし方に苦慮するようになった。

 昔の本を読み直してみたり、好きな音楽を集めたCDをパソコンで編集してみたり、ノロノロと時間をつぶす。もともと好きなスポーツ中継も今や貴重な存在で、砂漠の中のオアシスのごとし。野球も相撲も必ず付き合う。

 しかし、このささやかな楽しみにも新型コロナの影が差す。観客の姿は戻ったが、まばらで声援もなし。飛沫(ひまつ)防止で選手も喜びを爆発させにくそう。巨人が勝っても、何だか手放しではしゃげない。

 そんな中、大相撲7月場所で、序二段からはい上がった照ノ富士関が優勝を成し遂げた。満員御礼の中で勝たせてあげたかったし、大観衆に向かって感想を述べてほしかった。 

 ふと、1977年9月3日に時が戻る。満員の後楽園球場、大声援の中で756号ホームランを放ち、世界記録を達成した王選手。両手をかざし、舞うようにホームへと走る姿に胸が熱くなったことを思い出す。大記録はなくとも、コロナ前のような中継が早く見たい。ささやかながら切なる願いである。

(浜田市・清造)

2020年8月27日 無断転載禁止