音楽トリビア26の秘密 秘密(11)鍵盤の並び方

写真上はマリンバの鍵盤が上、下段そろった状態(じょうたい)。下は上段を外したところ=山陰(さんいん)フィル・ハーモニー管弦楽団提供(かんげんがくだんていきょう)
 ある有名な指揮者(しきしゃ)から聞いた愉快(ゆかい)な失敗談(しっぱいだん)を紹介(しょうかい)しましょう。

目印なくひやひや演奏

 音楽大学の学生だったころ、オーケストラの演奏(えんそう)旅行で木琴(もっきん)を演奏するよう頼(たの)まれたそうです。練習で演奏してみると、♯(シャープ)や♭(フラット)のない曲。そこで、遠方に演奏旅行に行く時には、♯や♭の音が出る上段(じょうだん)の鍵(けん)盤(ばん)を持って行くのをやめちゃったそうです。旅先で練習をしようと、持って行った下段の鍵盤だけを並(なら)べてみると、あら大変! どこがどの音なのかが分からない。これでは演奏できないと泣(な)きそうになったそうです。いろいろ考えた揚(あ)げ句(く)、本番の時には「ド」と「ファ」の所に印をつけて演奏したそうです。でも、間違(まちが)えそうでひやひやしたそうです。

 どうしてだと思いますか。上段の鍵盤の並(なら)び方に、その秘密(ひみつ)があるのです。

黒鍵の配列で分かるド・レ・ミの場所

 写真でお分かりの通り、木琴やマリンバなどの上段の鍵盤の並び方は、ピアノの黒い鍵盤と同じ並び方なのです。2個(こ)と3個にまとめられているのが分かりますか。

 ピアノの鍵盤も、実は黒い鍵盤が2個並んでいる箇所(かしょ)の左隣(どなり)の白い鍵盤を弾(ひ)くと「ド」の音が鳴るようになっています。黒い鍵盤が3個並んでいる箇所の左隣の白い鍵盤は「ファ」です。だから黒い鍵盤は、ずらーっと並んでいる白い鍵盤で鳴る音の「目印」になるのです。

既に15世紀初めには完成

 なんとこの並べ方、今残っている世界で一番古いチェンバロで見られるのです。驚(おどろ)くべきことに15世紀(せいき)初めには完成されていたといいます。まさに人類の英知の結晶(けっしょう)だと思います。

 この鍵盤があることにより、右手で旋律(せんりつ)を弾き、左手で伴奏(ばんそう)を奏(かな)でることができますね。さらに1人でいっぺんに10以上の音を弾くことができるのですから、これは画期的(かっきてき)ですね。

 しかも、白い鍵盤より黒い鍵盤が高く、短い。これが三つ以上の違った音を同時に弾く「和音(わおん)」を奏(かな)でるのに、手指の形と合っているので、とても便利なのです。

 だから、鍵盤があったヨーロッパでは、和音が音楽の中に大きな位置を占(し)めます。なかった地域(ちいき)、日本などでは、旋律が中心となり、音楽の発展(はってん)の仕方が全く違ったのです。

左手小指と右手親指で2鍵押さえることで、1人で12の音の和音を演奏するピアノ動画=筆者提供
 プロのピアニストや作曲家は、手指で和音を弾く形をすると、その音が頭の中で鳴ると言います。ピアニストはその形を体で覚えることによって、素早(すばや)くいろいろな曲が弾けてしまうわけです。作曲家もピアノがなくても、指でピアノを弾くような形にするだけで、音が頭で鳴るのです。

 そろばんも上達していくと、そろばんがなくても暗算ができるようになるのと一緒(いっしょ)ですね。

 (プラバホール芸術監督(げいじゅつかんとく)・長岡愼(ながおかしん))

2020年8月19日 無断転載禁止

こども新聞