衝撃スポーツクラスター(上)PCR検査遅れた判断

新型コロナウイルスの感染が確認された立正大淞南高校のサッカー部員が生活する陽光寮。建物前には救急車が止まっていた=10日午後5時25分ごろ、松江市大庭町
 松江市が9日深夜に発表した報道資料は3ページにわたり、新型コロナウイルスの新規感染者の年代や性別、主な症状が列挙された。実に91人。県内のそれまでの累計31人を1日で大きく超えた。立正大淞南高校のサッカー部で発生した学校関係で国内最大規模のクラスター(感染者集団)が要因だった。

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 「すぐに新型コロナと判断できなかった」-。同校の上川慎二教頭は生徒の発熱を確認してから、PCR検査を受けるまでの対応の難しさを口にした。

 感染者のうち82人がサッカー部の専用寮「陽光寮」に在籍し、部活動や寮生活で感染が広がったとみられる。5日深夜に最初の1人に症状が出た後、6日には19人が次々と発症した。

 ただ、この段階では主な症状は発熱のみ。8月に入り暑い日が続いたため、熱中症を疑った。上川教頭は「数日間様子を見ていたが、味覚症状を訴える生徒が出て、これはまずいと思った」と振り返る。最初のPCR検査が実施されたのは8日となり、症状を訴える生徒は30人まで増えていた。

 「熱中症と勘違いするケースはよくある」と、りんくう総合医療センターの倭正也感染症センター長(54)は指摘し、「だから疑うことが必要だ」と強調する。10日の記者会見で島根県の丸山達也知事は「(発症者が多く出た)6日の時点で、寮内で感染が広がっているのではないかと疑うことができなかったかどうかの検証と、その結果に基づく改善が欠かせない」と語った。

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 同校サッカー部の専用寮は文部科学省や県教育委員会の指針に沿って、生徒に手洗いやうがいを促し、部屋の換気を定期的に実施。毎晩、ドアノブやトイレ、洗面所など共用スペースの消毒もしていた。

 7月下旬から8月上旬にかけて県外に遠征した際も、鳥取県内や香川県内は日帰りで、大阪府内の宿泊も関係者が所有する施設を活用して、極力外部との接触を避けた。専用バスでの移動時は不特定多数が利用するサービスエリアに立ち寄らなかった。

 部員101人全員が寮生活をする石見智翠館高校ラグビー部の安藤哲治監督は「寮内の衛生管理については本当に難しい」と説明。生徒の体調観察を続け、感染拡大の予兆を見つけ出すことに神経をとがらせているという。

 部活動に取り組み、寮生活を送る生徒は県内にも数多くいる。感染しても無症状のまま気付かず、いつもと変わらない生活を送る場合もあるだろう。大規模な「スポーツクラスター」の発生は、食事や風呂といった共同生活の場である寮や部活動での感染予防策に多くの課題を突き付けている。

2020年8月11日 無断転載禁止