音楽トリビア26の秘密 秘密(8)オーケストラ(後編)

序曲き、協奏曲、交響曲どれもオペラが基もとに

 オーケストラの演奏会(えんそうかい)に行ったことありますか? たいていは序曲(じょきょく)から始まり、2曲目は協奏曲(きょうそうきょく)、休憩(きゅうけい)の後は大きな交響曲(こうきょうきょく)ですね。

本編への予告編

 今回はこの曲目の秘密(ひみつ)。実は、序曲、協奏曲、交響曲も「オペラ」から始まり、発(はっ)展(てん)した音楽なんです。

 近頃(ちかごろ)では、演奏される序曲のほとんどは「オペラ」の本編(ほんぺん)が始まる前に演奏するために作られたものです。いわば、オペラの「予告編(よこくへん)」です。オペラの中で歌われる歌を「アリア」といいます。オペラの中では、人の声で演奏されるアリアの旋律(せんりつ)を、序曲ではその旋律の感じに合わせた楽器で演奏させるのです。連載(れんさい)2回目に木管五重奏の秘密でお話しした、管楽器にカッコいいソロを演奏させる方法が、ここで発揮(はっき)されます。そこで耳になじませて、本編のオペラで出てきたアリアに親しめるように作られています。

 協奏曲は、1人ないし複(ふく)数(すう)の独奏者(どくそうしゃ)が、オーケストラを従(したが)えて歌心(うたごころ)たっぷりの旋律や、名人芸を発揮する曲(※)ですね。これも実は、オペラのアリアの旋律を独奏楽器に演奏させようというのがきっかけです。

フィレンツェ生まれの新芸術

 テレビや映(えい)画(が)もなかった昔のヨーロッパの娯楽(ごらく)の一つはオペラでした。

 オペラは、始まった年代と場所がはっきり分かっています。ルネサンス時代末期の1598年にイタリアのフィレンツェで産声(うぶごえ)をあげました。その後、驚(おどろ)くべき速度でベネチアや南側のマントバ、ナポリ、ローマなどイタリア各地から、さらにはアルプス山脈(さんみゃく)を越(こ)え北方にも広がります。最も繁栄(はんえい)したのはベネチアで、17世紀(せいき)だけでも16もの劇場(げきじょう)が建てられ数百のオペラが初演されたと伝えられています。そこで活躍(かつやく)した多くの作家や作曲家が、全ヨーロッパの王様や貴族(きぞく)に召(め)し抱(かか)えられていきます。フィレンツェ発のこの新芸術(げいじゅつ)はイタリア主導(しゅどう)で進んだのでした。 

 ベートーベン(1770~1827年)が活躍(かつやく)した時代のウィーンでも、イタリア人作曲家のロッシーニ(1792~1868年)のオペラが、絶大(ぜつだい)な人気を誇(ほこ)り大ヒットしていました。彼(かれ)は1829年までの約20年間に、改作(かいさく)を含(ふく)めて39曲ものオペラを作曲したのです。ところが、37歳(さい)の若(わか)さで、突然(とつぜん)オペラの作曲をやめたのでした。大金持ちになった彼は、料理の研究や美食家(びしょくか)として過(す)ごし、彼の名前がついた料理もたくさんあるんですよ。

 ベートーベンが得意(とくい)だった交響曲も、オペラの序曲を独立した形で楽しもうとしたのがその始まりです。つまり、近代の西洋音楽はイタリア発のオペラが基礎(きそ)となって発達したのです。

(プラバホール芸術監督(げいじゅつかんとく)・長岡愼(ながおかしん))

 (※)協奏曲にはピアノやバイオリンなど1種類の楽器を用いた曲や、フルートとハープなど異(こと)なる楽器の組み合わせによる曲もあります。

2020年7月8日 無断転載禁止

こども新聞