世事抄録 新市庁舎計画に見る硬直

 やはりと言うべきか、松江市役所の新庁舎建設計画をめぐり「待った!」の声が広がってきた。2月に市民有志が求めた緊急説明会を傍聴して市側の硬直姿勢に危うさを感じていたが、当初より30億円も膨らんだ事業費150億円、7年の長丁場となる現在地建て替えに疑問が噴出している。松浦正敬市長がことし12月着工に変更はない考えを述べたのに対し、新たに結成された市民団体は住民投票を目指すらしい。

 計画概要を読んで最初に感じたのは、街づくりと新庁舎のビジョンが案外希薄なことだ。老朽庁舎の耐震・防災から検討を始めて、なぜ大橋川で南北に分断された市街の弱点と橋北の現在地が孤立する可能性に思いが及ばないのか。かつて北へ10キロ離れた島根原発の2号機建設の際にも、大地震で橋が落ちたら怖いという反対意見が多く出された。市のホームページは「市中心部にあり、島根県庁舎にも近く、バス等の公共交通機関も確保されており適切」と説明するが話は逆。万一の場合に両庁舎もろともまひしたらどうする。

 救えないのは旧市街しか見えない狭い中心感覚。平成大合併で旧宍道町、旧東出雲町まで市域となり、50年後に新幹線も走っているかもしれない県都なら、ハイテク新庁舎を橋南のJR駅近辺に想定するのが自然だ。となれば現在地は国宝松江城と松江しんじ湖温泉を結ぶ文化観光の回廊として、跡地活用の知恵も試されよう。

(松江市・風来)

2020年7月2日 無断転載禁止