佐藤さんの教え

 がん患者と家族でつくる全国組織「癌(がん)と共に生きる会」の会長を務め、56歳の若さで亡くなった出雲市の佐藤均さん。28日は15回目の命日だった。「(日本人の)2人に1人がかかり、3人に1人が亡くなる時代。がんのこと、みんなもっと考えなくちゃあ」。自らもがんと闘い、国への要望活動を続けた報道カメラマンで、会うたびそう言っていたのを思い出す▼2000年代初め、既にがんは「国民病」だったが、都市部との医療格差、さらに情報の少なさが、患者、家族を孤立させていた。海外で認められていても、国内では保険適用外の抗がん剤は、医師から説明がされないことも。助かるかもしれない薬でも、だ▼地域医療を考えるシンポジウムで格差是正を望む声に、登壇した医師から「10年はかかる」と言われたこともあった。身を削る患者と、医療者やメディアを含む「その他」。両者のスピード感は明らかに違った▼患者たちはその違いを乗り越え、国を動かし「がん医療」を変えた。拠点病院が増え、病院ごとの治療成績の公表も進んだ。全国どこでも同水準の治療が受けられるよう定めたがん対策基本法もできた▼「私は荒れ地の草刈りをした」。佐藤さんは亡くなる12日前に載った本紙インタビューでこう語った。自分にできることを考え、動けば、社会は変わると身をもって示した。教えは、この先の時代にもつながっている。(吉)

2020年6月30日 無断転載禁止