観光バス、感染対策も… 利用客いないと意味ない

バスの座席間に取り付けたビニールシートを確認する赤松祐樹さん=松江市八束町二子、はつみ交通
 「昨年の今頃は忙しかったんだけどなあ」

 大型バスのホイールを磨きながら、はつみ交通(松江市八束町二子)のベテラン運転手、坂田耕さん(66)がため息をついた。

 「いつでもお客さんを乗せられるように、きれいにしておきたい」

 車両整備に余念がない坂田さんは、2月以降一度も客を乗せて走っていない。

 大型バス3台、マイクロバス2台を所有し、貸し切り事業が主軸の同社は新型コロナウイルスの影響で大打撃を受け、3月からほぼ休業状態が続いている。

 緊急事態宣言が解除されて移動自粛もなくなったが、今月の大型バス利用は予約も含めて1件のみ。これでは会社として全く立ち行かない。

 23日、事務所前には地元メディア6社が集まった。世の中で進む「新しい生活様式」に対応したバスを広く知ってもらおうという試みの一環だ。

飛沫(ひまつ)防止用のビニールシートをホームセンターで購入し、社員総出で座席背面に貼り付けた。松江市の補助金を活用し、フェースシールド500枚、非接触式の体温計や除菌用品もそろえ、カメラの放列を前に、体温測定の予行演習をして安全性をアピールした。

 頑張ったかいあって一部テレビ局はトップニュースで取り上げてくれた。しかし、今のところ新規の予約は入っていない。

 政府が国内旅行を補助する「Go To キャンペーン」、島根県の県民向けのプレミアム付き「宿泊券」など、観光業の喚起策はいくつも用意されている。だが、移動手段に多くの人が乗車するバスが選ばれるのか、先行きは見えない。7月の予約はまだ4件しかない。

 「お客さんが利用してくれないことには、意味ないよ」

 田村初美取締役営業部長(53)の言葉は重い。

 苦肉の策として、今月中旬から大手運送会社の下請けで宅配業務を始めた。新事業の検討も進めている。貨物事業を担当する営業部の赤松祐樹さん(37)は「コロナ禍でも貨物は動いていた。不況に左右されない柱がないと、雇用を守れない」と真剣なまなざしで語った。

2020年6月25日 無断転載禁止