おもしろサイエンス(3) デザインってサイエンス?

(上)キンダーマーカーたふっこ(2007年度キッズデザイン賞、株式会社フレーベル館、キッズデザイン協議会提供) (下)子どもの身体寸法をメジャーにしたストラップ(日本インダストリアルデザイナー協会、産業技術総合研究所、キッズデザイン協議会提供)
使う人が幸せになるモノや形を考える

 みなさんお絵かきでちょっと太めのマーカーを使っていたことはありませんか。そのマーカーのキャップ、中から見ると穴(あな)が開いているものがあります。穴が開いているとマーカーのペン先が乾(かわ)いてしまって使えなくなりそうですね。なぜなんでしょう。

 実は、マーカーのふたをコロコロとテーブルの下に落としてしまったりした時、それを赤ちゃんがのみ込(こ)んで喉(のど)に詰(つ)まるといった事(じ)故(こ)が起こっていたんです。その時、キャップに穴があれば息が詰まるのを防(ふせ)ぐことができます。このために穴を開けたんですね。

 普(ふ)段(だん)の生活の中で起こる事故の原(げん)因(いん)をよく調(ちょう)査(さ)し、どうやったら防ぐことができるかという研究が進められているんです。

 また、家庭用のシュレッダーに子どもが指を挟(はさ)まれる事故もありました。紙を入れる口は大人の指が入らないようには設(せっ)計(けい)してありましたが、子どもの指はもっと小さいのですね。

 そこで、人間生活工学研究センターでは2005年から調査を始めてデータを蓄(ちく)積(せき)しました。その結果、たとえば1歳(さい)児(じ)の人さし指の厚(あつ)みは5ミリほどしかなく、3歳児になっても7ミリ以下だということがわかりました。

 こうしたデータをつかってデザインしやすくするために、日本インダストリアルデザイナー協会では子どもの大きさのマネキンや型(かた)紙(がみ)をデザインしています。

 デザインというのは格(かっ)好(こう)良い形や色を決める仕事だと思われているかもしれませんが、それはほんの一部なんです。格好良いけれどあまり使い勝手がよくないものは、良いデザインとは言わないのですね。使う人が本当に幸せになれるようにすべてのモノや形、マークなどを考えるのが、デザインなんです。

筑波大学芸術系教授 山中 敏正
■略歴

 1957年松(まつ)江(え)市生まれ。津(つ)田(だ)小、松江四中、松江南高卒、82年に千葉大学工学研究科工業意(い)匠(しょう)専(せん)攻(こう)を修(しゅう)了(りょう)。旭(あさひ)光学株(かぶ)式(しき)会社(現(げん)リコー(株))でデザイナー・研究員として勤(きん)務(む)。84年に筑(つく)波(ば)大学着(ちゃく)任(にん)、2001年からは大学院感(かん)性(せい)認(にん)知(ち)脳(のう)科学専攻で感性科学を研究。05年から教(きょう)授(じゅ)。日本デザイン学会会長などを歴(れき)任(にん)

2020年6月24日 無断転載禁止

こども新聞