音楽トリビア26の秘密 秘密(7)オーケストラ(前編)

演奏に奇跡 存在大きな良い指揮者

 私(わたし)は若いころ、東京フィルハーモニー交響楽団(こうきょうがくだん)というオーケストラで、ホルン奏者(そうしゃ)をしていました。今思うとオーケストラって、「奇跡(きせき)」の連続だったと思うのです。

 皆(みな)さんは「奇跡」なんてそんなに簡単(かんたん)に起きないよ! って思うでしょうが、不思議(ふしぎ)なことにオーケストラでは起きるんです。

立つだけで伝わる音楽

 良い指揮者(しきしゃ)といわれる方は、指揮台に立つだけで、彼(かれ)の音楽が楽員に伝わるという「奇跡」が起きます。そしてその指揮者が、音楽を体の動きで示(しめ)す、つまり指揮をすると、オーケストラの音がフワッと頭上に浮(う)き上がる「奇跡」が起こるのです。オーケストラの楽員は「これが自分たちの出している音なのか」と感動するほどです。

 楽員の多くは、オーケストラに入るまでに20年近く音楽を勉強しています。最初に始める楽器は、ピアノかバイオリン。ピアノを最初に習い、小、中学校のブラスバンドやオーケストラの部活動で、管(かん)楽器や打楽器を知り、その面白さにハマってしまうケースが多いですね。私が勉強した東京芸術(げいじゅつ)大学の同級生も、ほとんどそうでした。楽器の練習がとにかく楽しくて、周りから見れば「努力」でしょうけれど、本人たちは一向に苦にならなかったようです。

 ピアノや管、打楽器は、子ども用の物はありませんが、なんとバイオリンは子ども用の小さいサイズの物も用意されていて、習いやすくなっています。私の知っているバイオリン奏者の多くは、テレビなどで弦(げん)楽器を演奏(えんそう)している姿(すがた)を見て、「自分はこれができる」と思い、「やってみたい」と両親にせがんだそうです。

音楽する喜びにあふれる広島交響楽団と指揮者・音楽総(そう)監督(かんとく)の下野竜也(しものたつや)氏=同楽団提供(ていきょう)
厳しさに勝る奏でる喜び

 小、中学校時代に、そのように面白く楽しいものに出合え、続けていけるのは、本当にラッキーなことだと思います。

 高校や大学の受験、コンクールにオーケストラの入(にゅう)団(だん)試験など、たくさんの関門があります。それらを通(つう)過(か)し、無事プロの奏者になった後も、プレッシャーに押(お)しつぶされ、やめる方もいます。真の実力が問われる、厳(きび)しい世界です。

 それよりも演奏の楽しさが勝(まさ)り、音楽を奏(かな)でることに喜(よろこ)びを見いだし続けている人たちの集団がオーケストラなのです。その喜びを共有(きょうゆう)でき、楽員の実力を最大限(さいだいげん)に発揮(はっき)させる指揮者が「奇跡」を生むのです。

 今年は新型(しんがた)コロナウイルス流行の影響(えいきょう)で、7月12日にプラバホールで予定して

いた広島交響楽団の島根定期演奏会(※)などオーケストラの演奏会も軒並(のきな)み中止や延期(えんき)になっていますが、再(ふたた)び鑑賞(かんしょう)できる日が来るよう、流行の早期収(しゅう)束(そく)を願ってやみません。

 (プラバホール芸術監督(げいじゅつかんとく)・長岡愼(ながおかしん))

 (※)延期となった広島交響楽団第28回島根定期演奏会の日程は未定です。

2020年6月24日 無断転載禁止

こども新聞