うちの強みが…頭抱える 100人規模レストラン危機
松江市寺町のレストラン「縁(えにし)・創作料理と島根の唄」のオーナー、田尻哲也さん(59)が頭を抱える。
2017年11月、地元歌手の歌声に耳を傾けながら、食事を楽しめる大型飲食店としてオープン。店内にはステージや音響設備があり、最大130人を収容できるのが売りだ。大規模なパーティーができる店として評判になり、官公庁や金融機関、学校の歓送迎会のほか、結婚式の2次会、スポーツ団体の決起集会、報告会に活用され、売り上げは右肩上がりだった。
「奈落の底に突き落とされた」
新型コロナウイルスの影響で、同店は3月1日から臨時休業を続ける。自粛ムードの直撃を受けて予約がぱったりとなくなった。緊急事態宣言の解除や島根県内で新型コロナの感染者が確認されなくなったが、予約は戻っていない。
5月中旬には経済団体が事業の本格再開と感染予防両立のための指針をまとめた。指針通りの間隔で席を配置すると、最大40人しか入れない。ビュッフェや音楽ライブの開催も困難だと判断した。
「うちの強みがすべて殺された。ただ、もしうちで感染が広がれば、クラスター(感染者集団)は3桁規模だったかもしれない」
最大40人しか呼び込めないのであれば、とても収支は合わないが、料理の単価を上げることはできない。
2号店として昨年7月に開店した同市朝日町のラーメン店も市内で感染が広がって以降は臨時休業にしている。
コロナ騒動以前、ラーメン店の支店を欧州に出す計画もあった。残るラーメン店の計画を進め、海外で勝負するか。さまざまな選択肢を前に今、岐路に立つ。
事態が収束したとしても、以前のように連日パーティーの貸し切りでいっぱいになるようなビジョンは描けない。第2波への懸念も拭えない。
「もうしばらく様子を見るが、いずれにしても、ここ(レストラン)に執着していると、きっと判断を誤る」と、大勢でにぎわったレストランは閉じる覚悟を固めつつある。
2020年6月24日 無断転載禁止