世事抄録 初夏の憂鬱(ゆううつ)

 新型コロナウイルスに翻弄(ほんろう)されたゴールデンウイークは異様だった。あるべき所に人影がない。見事である。罰則がない中で、他人に迷惑を掛けてはならないという日本人の美徳を再認識する。子どもたちの帰省がない連休はやはり寂しい。妻は衣類の整理と母、娘たちに送る総菜作りに腕を振るう。その補助にわずかの加勢をする。

 緑のカーテン作りに取りかかったが、ゴーヤーとキュウリの昨年の位置が分からない。まあ、昨日の食事のメニューだって忘れている。記憶力の低下に落胆しつつ、写真で位置を確認し、連作を嫌うので昨年と逆に植え込む。

 窓越しに広がる田園風景。西側の田に水が入り、連休中にほぼ田植えが終わった。ゆっくりと時間が過ぎる初夏の風物詩に心が和む。緑の絨毯(じゅうたん)は日を追うごとに濃くなる。秋に黄金色になるまで成長を続ける。最近は休耕田が増え、雑草の中でカラス、サギ、トンビ、猫、時にはキツネが戯れている。季節の移ろいとともに、動物たちの様子を見ることも至上の楽しみである。

 こののどかな初夏の風景が暗くなる時がある。新型コロナウイルス撲滅の先が見えない。疲弊した国民に対する速やかな救済措置が語れない首相の会見は、空疎な言葉が並ぶ。晴れない心はどこまで続くのか。

 昨年の今頃は、日本国中が令和元年に浮かれていた事を思い出す。

(浜田市・清造)

2020年6月4日 無断転載禁止