国を揺るがす大ちょんぼ

 「ちょんぼ」とはマージャン用語の一つ。条件を満たす牌(はい)がそろっていないのに上がりを宣言するなどのミスを犯すこと。その代償として他の参加者へ結構な点数を献上する。心得のある人は誰でもお分かりだろうが、勝負の途中で決して聞きたくはない嫌な言葉だ▼小説や漫画だと、こんな場面がある。相手の高得点を阻むため、先にわざとちょんぼをして、被害を低く食い止めるのだ。下手を装ったすご腕主人公の高度なテクニックに、読んでいて思わずうなった▼東京高検の黒川弘務検事長が辞職する原因となった賭けマージャンはまさに「大ちょんぼ」。ただし3密や賭博罪の方に気を取られ過ぎて、これまでの大事な論議が吹き飛ばないようにしたい▼検察官の65歳までの定年延長や63歳での役職定年は、国家公務員法の改正と合わせて時間をかけて練られてきた。しかし、今年に入って条文案に、内閣による個別の役職定年延長が特例として滑り込み、国民の反発を招いた。内閣の恣意(しい)的な人事を可能にする条文は、この際引っ込めた方がよかろう▼定年延長は年金の支給開始年齢にも連動した話。退職後も弁護士として引く手あまたの検察官に適用すべきか。ここも議論の余地はありそうだ。黒川氏の悪手でケチはついたが、与野党によるこの勝負、うやむやにしてはいけない。マージャンで言うところのオーラス、最終局まで見届けよう。(示)

2020年5月27日 無断転載禁止