ネオン街閑散、経営者の決断
「14年間、夜の店を誇りに思い営業してきた。社会の流れが変わり、もうこれ以上、続けられない」
伊勢宮の中央部、雑居ビル2階にあるスナック「Reborn(リボーン)」を経営する佐々木生(いく)さん(36)は、常連客が入れてくれたボトルの一本一本を手に取り、うつむいた。
20代前半に伊勢宮で開業し、20席ほどのリーズナブルな形態の同店をオープンさせて6年目になる。5人の従業員と一緒に切り盛りする店には、若者から80代まで幅広い客層が詰め掛けた。
「とうとう出たか。しかも近くだ」
4月9日、近くの飲食店従業員が新型コロナに感染、すぐに営業を自粛した。今月15日、島根県は接待を伴う飲食業について、十分な感染防止対策を取った店舗であれば、利用自粛を求めないとした。
店を再開しなかった。今週末の営業を最後に、廃業を決めた。
一番の要因は1歳になる長男の存在だ。「もし、自分が感染して息子にうつすことでもあったらいけない。愛する家族を守りたい」と強く思った。店を愛してくれる常連客たち、頑張る従業員たちにも同様に「万が一があってはいけない」という思いがある。
新型コロナで経済情勢が悪化し、酒場での出費は減るだろう。ちまたでは自宅でパソコンやスマートフォンを使って友人らと会話する「オンライン飲み会」が流行。「デジタルツールに勝てるのかと言われれば、分が悪い」と、コロナ後の変化に旧来のスナック経営は難しいと先を読んだ。
23日に最終日を迎える。客は入れない。ユーチューブで、店に立って別れを告げる様子を生中継する予定だ。生中継を成功させるには同サイトの規約上、店のチャンネルにあと530人の登録が必要となる。
「14年間自分を支えてくれた客とスタッフにお礼を言いたい」
八方手を尽くして視聴を呼び掛けている。
2020年5月22日 無断転載禁止