母親の姿を見て育つ

 昨年の出生数は86万人台だという。1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す合計特殊出生率が「丙午(ひのえうま)」の迷信が響いた1966年以上に落ち込み「1.57ショック」と言われた31年前でも出生数は124万人余りだった。それよりも約38万人少ない▼時代が平成に変わった頃に起きた「1.57ショック」は、自治体が定住・少子化対策に乗り出すきっかけになった。しかし出生数を見る限り、その効果は限定的だったようだ▼当時は若い女性が都会に流出する原因として、進学・就職先の不足や、買い物、遊ぶ環境の少なさが指摘された。さらに取材先で聞いたのが、遠因としてのトイレ環境と暗い道、そして母親の姿だ。いずれも日常的に接しているだけに、少なからず影響があるとの見方だった▼今ではトイレは水洗、男女別が当たり前で、街灯やコンビニの照明も増えた。残る母親の姿はどうか。家や職場で働く母親を見て、自分もそんな生き方をしたいと思うかどうかが娘の進路に影響するという。逆に母親が、自分と同じ生き方を娘にさせたいかどうかもある▼昔と違い、女性向けのオプション(自由選択)は結婚・出産以外にも増え、ネットを通じて情報も入るようになった。ただ一番の見本は母親。はつらつとした女性の姿が、家庭や職場、地域で増えないと、真の少子化対策にはつながらない。それには男側の意識改革も欠かせない。(己)

2020年1月13日 無断転載禁止