ツワブキと島根半島

 本紙出雲面で昨年11月から連載している企画「体験的!四十二浦巡り」があす最終回を迎える。その取材で同僚記者5人と手分けをして、美保関から日御碕まで島根半島の浦々を歩いた▼「歴史と自然に裏打ちされた暮らしをテーマに42の物語を書きたい」と発案。島根半島があってこそ、出雲部は隠岐や石見部とは違った風土を形成していると感じる。ただ、知識不足のため、深掘りした内容になったかは反省しきりだ▼例えば、松江市島根町大芦の伝統行事で、子どもたちが「龍蛇」に見立てて編み込んだわらを隠し、大人が探し回る「チーナマイタ」は、島根半島四十二浦巡り再発見研究会の協力で取材候補を探し始めるまで、その存在を知らなかった。子や孫に接するように丁寧に取材に応じていただいた地域住民、松江市の公民館、出雲市のコミュニティセンターの皆さんには、感謝しかない▼取材を通じて、普段はあまり足を運ばない、秋から冬にかけての島根半島も歩いた。印象に残ったのが、海沿いの斜面や集落内の溝で黄色い花を咲かせるツワブキの群集。塩漬けにしたり、さっと湯がいたりと食用として大切にされ、酒のさかなや宴席のお膳にも出てくる▼ツワブキの花言葉は「謙譲」「困難に負けない」。気候が厳しい時季に花を咲かせる姿は、人口の流出が進む中で地域の伝統文化や景観を守ろうと努力する浦々の住民に重なる。(万)

2019年11月28日 無断転載禁止