レッツ連歌(下房桃菴)・9月12日付

(挿絵・Azu)
 うわさがうわさ呼ぶが世の中

少しだけ消えた気もする顔のシミ
              (出雲)野村たまえ

幽霊をネタに地上げ屋大儲け (出雲)はなやのおきな

蜜月と破局で売れる週刊誌  (松江)岩田 正之

待ち時間長い医者へと足が向き(雲南)錦織 博子

二代目はチョンマゲ結ってソバを打ち
              (江津)花田 美昭

行列のできるソバ屋で食べ残し(雲南)錦織 博子

そげだらかそげなもんだわそげだわね
           (兵庫・明石)折田 小枝

持参金隣の嫁は二千万    (出雲)吾郷 寿海

つぶやいただけで株価が乱高下(松江)持田 高行

つぶやきが地球一周駆けめぐり
           (沖縄・石垣)多胡 克己

ボランティアやってたとかで許される
              (益田)石田 三章

今日もまた残業をするあの二人(安来)根来 正幸

情報の管理巧みな進次郎   (松江)佐々木滋子

やさしさを感謝している人もいて
              (浜田)三隅  彰

宇津井健三浦友和親子説   (益田)石川アキオ

最初とはちょっと違ったオチがつき
              (出雲)野村たまえ

嫁が悪い姑が悪い茶が旨い  (出雲)岩本ひろこ

今のうちキムチプルコギ買い占める
              (出雲)放ヒサユキ

子の進路いつのまにやら決められて
              (出雲)櫛井 伸幸

爺ちゃんも聖火ランナー目指してる
              (松江)小谷由紀子

ミーハーのころ懐かしむお婆ちゃん
              (松江)花井 寛子

イノシシもサルも知ってる芋畑(雲南)妹尾 福子

爺ちゃんが三回くらい死んでいる
              (松江)山崎まるむ

神童と呼ばれ人生棒に振り  (益田)吉川 洋子

           ◇

 「残業をする二人」は、ずいぶん不器用な二人ですね。さっさと仕事を済ませて、人目に付かぬところでゆっくりデートすればよさそうなものですが…。

 いやいや、そうではない。この二人、実はあえて人目に付きたがっているのではないか。だとすれば、その気持ち、分からないでもありません。

 嫁が悪いか姑が悪いかという問題と茶が旨(うま)いこととは、なんの関係もないと思うのですが、それが実は大アリだったのですね。…人の悪口を言いながら飲むお茶の、まあ、なんと旨いこと! その情景がありありと目に浮かびます。だから、うわさが広がるのですね。ネット上の「炎上」なんてのも、同じ現象なのかもしれません。ああいうのも、一人一人はごくふつうの人だ、と聞いたことがあります。

 ヒサユキさんの句を読んで、私はすぐに、第一次オイルショックのときの騒動を思い起こしました。

 石油危機の影響でトイレットペーパーがなくなる、といううわさが広がって、みんなが我(わ)れ先にと買い占めに走る。その結果、実際あっというまに店頭から商品が消えてしまいました。うわさがたちまち現実となったのだからたまりません。これに端を発して、生活必需品が次々と品不足に陥り、便乗値上げが横行して、ついに狂乱物価の時代に突入しました。

 ヒサユキさん、くれぐれもご自重のほど、よろしくお願い申しあげます。

 最後に、福子さんの「芋畑」―。うわさが広がるのは、人間社会だけではなかったのですね。これもおもしろい句作りでした。

           ◇

 次は、最近やたらと耳にする、

  総合的に判断をして

という呪文を前句にして、五七五の長句を付けてください。

(島根大名誉教授)

2019年9月12日 無断転載禁止

こども新聞