島根発 世界行/持続可能な幸せ創る学び

島根県教育魅力化特命官 岩本 悠

 この夏、10日間ほどブータンを訪問した。文科省や外務省などによる日本型教育の海外展開事業の一環で、島根発の学校魅力化事業をブータンで進めるためである。

 そもそも、なぜブータンなのか。それは、島根と多くの共通点があるからだ。人口は島根と同程度の約70万人で、若者の都市部への流出と中山間地域の衰退という課題も共通している。

 「GNH(住民総幸福度)の向上」という国づくりの理念は、島根の目指す地域づくりの方向性と同じだと感じる。私自身、地域づくりや人づくりの究極の目的は、持続可能な幸せだと考えている。今だけにとどまらず、将来や次世代、個人だけでなく地域や社会の幸せが含まれるものだ。ブータンとなら持続可能な幸せづくりを、ともに進めていけるのではないかと思ったのだ。

 今回の訪問では、地域課題解決型学習の生徒向けワークショップと、教員研修を行った。地域課題解決型学習とは、地域社会の「人・もの・こと」を活かしたプロジェクトを実践し、主体性や協働性を育むものである。生徒たちはこの過程を通して、地域の魅力や課題、可能性を再発見し、愛着や誇り、社会参画・貢献意欲が高まる効果がある。

 人口流出の激しい町を舞台に、現地の生徒と島根の高校生が一緒に、地域の魅力を伝える観光動画も制作した。事前に決まっていた時間、会場、参加者などが急に変わったり、同行した島根の教員らが腹を下したり、試行錯誤の連続ではあったが、ワークショップは非常に盛り上がった。動画作品は想像以上に良く、旅行会社のウェブサイトに掲載された。生徒や教員からは継続を望む声が多く、ブータン教育省とは今後3年間、学校魅力化による持続可能な幸せのための学びを、協働で開発していく方向となった。

 学校魅力化はもともと、島根の離島・中山間地域と学校現場の切実な課題感から始まった。県が支援するようになり、今では国の次期地方創生と教育改革の柱の一つになっている。2025年の万博を通して、日本発のソーシャルイノベーションとして世界に発信できないかという話もある。ローカル(地域)からの動きが、県や国のシステムを変え、グローバル(世界)にも広がろうとしている。

 学校魅力化は多くの悩みを抱えながらも、「小さく始め、大きく育つ」過程における成長期に差し掛かっているのだろう。こういう時こそ、中長期的な視点を持ち、現場の「学びの質の向上」と「持続可能な体制・基盤構築」にしっかりと取り組むべきであろう。島根から世界にも挑戦できる次代の若者たちが育ってくるように。そして、子どもや若い家族も含めて、笑顔で幸せに暮らし続けられる開かれた島根をつくるために。

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 いわもと・ゆう 1979年、東京生まれ。大学時代にアジア・アフリカを巡り「流学日記」を出版。その印税などでアフガニスタンに学校をつくる。ソニーを経て、2006年から隠岐島前の高校魅力化に従事。15年より島根県の教育魅力化に携わる。

2019年8月25日 無断転載禁止