「孤独のグルメ」の癒やし

 休日や仕事が終わった後の深夜。録(と)りためたドラマを再生する。「孤独のグルメ」。癒やしの時間が始まる▼多少のストーリーはあるが、輸入商を営む独り身の中年男性が仕事の合間にふと立ち寄る飲食店で一人で食事するだけの話だ。「腹が、減った…」の一言で店探しが始まる。スマートフォンなどは使わず、勘で店を選ぶ。食べるのは煮魚や焼き肉、カレー、ハンバーグなど庶民的な料理。「漬物がうまい店は信頼できる」「ソース味で俺はいつだってガキ大将になれるんだ」などと心でつぶやき、一人飯を堪能する▼筆者は46歳。若い頃は恋愛ものなどドラマを観(み)たが、いつしか観なくなった。寂しいから一人で食事するのが嫌いだ。そんな自分がなぜ「孤独のグルメ」に惹(ひ)かれるのか。年を取ったからか。それだけではない▼グルメといっても高級店やご当地ものの食べ歩きではない。出てくるのは大衆食堂など安くてどこか懐かしい店が多い。目まぐるしく変わる世の中。華やかで時代の流れに乗る都会ではなく、古き良きものが変わらず残る地方が重なる▼原作の漫画の作画は鳥取市出身の漫画家・谷口ジローさん(故人)が担当。鳥取市役所の食堂メニューの「素ラーメン」が取り上げられた。いつかドラマで山陰両県の店が登場するのを待っている。今日も家族の「またぁ?」との声をよそに、癒やしと幸福感を求めて再生ボタンを押す。(添)

2019年8月20日 無断転載禁止