「金曜日」の執念

 10年以上前、東京・神保町にあった吉本興業東京本社へ張り込みに行った。当時は夕刊紙の記者。謝罪に来た芸人を直撃しようと、夕刊紙にしては盤石な3人態勢で取材に向かったが、既に周囲には同業者の姿があった▼礼儀として同業者に名刺を渡した。相手は写真週刊誌「FRIDAY(フライデー)」の記者だった。仕切り役が胸のポケットから小型マイクで指示を飛ばす。周辺の駐車車両や雑踏に10人近いカメラマンが潜み、臨戦態勢を敷いていた。まさに多勢に無勢、芸能スキャンダルへの執念を思い知らされた▼時代は令和へと変わったが、吉本所属の芸人と反社会勢力の”蜜月”を暴いたのもフライデーだった。渦中の写真は張り込みではないが、いまだに芸能人が反社会勢力と金銭が絡む関係にあるとは、あきれてしまう▼くしくも、前職での最後の仕事は島田紳助さんの引退記者会見だった。暴力団関係者とのメールが問題になった紳助さんは「この程度で引退しなくてはいけない」と唇をかんだ。会見場で「これで引退なのか」と、驚いた記憶がある▼吉本所属ではないものの、過去に大物芸能人ファミリーと反社会勢力の蜜月ぶりを目の当たりにした経験があったからだ。大手マスコミと芸能界の間には複雑な力関係が働き、闇に包まれる事象が多い。出版不況は厳しくなる一方だが、今なお残る、写真週刊誌の執念深さを感じた。(釜)

2019年8月18日 無断転載禁止