戦いの実相 19参院選を終えて (下)「共産候補」自民崩せず

野党統一候補の中林佳子氏(左から3人目)を応援する共産党中央委員会の小池晃書記局長(左)や野党の地元組織幹部ら=9日、松江市殿町、島根県庁前
多弱野党の共闘不発

 衆院選向け対立軸不可欠

 「これからの政治を変える大きな動きが始まった」―。参院選から一夜明けた22日、鳥取・島根合区選挙区(改選数1)で落選した共産党元衆院議員の中林佳子氏(73)が松江市内で街頭に立ち、支持者約30人を前に自信をのぞかせた。

 中央主導で野党統一候補となり、幅広い支援を狙って共産公認から無所属に切り替えて臨んだ選挙戦。自民党現職の舞立昇治氏(43)に約16万票差をつけられたものの、共同通信社の投票日の出口調査では無党派層の投票先で上回った。

 共産が「推薦」、立憲民主、国民民主両党が「自主投票」、社民党が「支援」で野党の地元組織の対応が分かれる中、各党の地元幹部らが街頭で中林氏と並んでマイクを握る場面もあった。共産島根県委員会の後藤勝彦委員長は「各党の事情はあったが乗り越えて大きな力を発揮した」と手応えを口にする。


候補の不在で制限

 一方、立民、国民の受け止めは違った。

 「候補を立てない選挙がこれほどまでやりにくいとは思わなかった」

 22日、松江市内の国民島根県連事務所にあいさつに訪れた中林氏や後藤委員長に、国民島根県連の岩田浩岳幹事長が告げた。

 国民と野党第1党の立民は比例代表の戦いに力を入れたが、選挙区候補の不在で活動は制限された。自主投票の判断は比例票にも影響。両県で立民は7万6748票、国民は3万2828票で、前回選で民進党が獲得した票に比べ、島根は6894票、鳥取は6287票それぞれ減った。

 立民島根県連の亀井亜紀子代表(衆院比例中国)は支持者から「共産に一本化して負けてもいいのか」と党本部への不満の声をかけられた。国民を含めて地元組織が候補を発掘していただけに「不完全燃焼」と唇をかんだ。

 影響を受けたのは立民、国民の支持母体で「反自民、非共産」を掲げる連合も同じ。島根県内での組織内候補の比例得票総数は前回選から約2千票減。連合島根内では、選挙区対応で組合員に白票を指示した産別や単組もあり、原田圭介事務局長は「組合員に戸惑いが広がり、盛り上がりに欠ける選挙だった」と落胆する。


「勝つ可能性十分」

 共産が擁立した候補で自民の壁を崩せず、野党共闘が不発に終わった中、各党の地元幹部の視線の先には衆院選がある。

 衆院の残りの任期は2年余り。安倍晋三首相は解散は今のところ念頭にないとしながらも「あらゆる選択肢を排除しない」と含みを持たせる。野党が「多弱」の中、国民島根県連が23日に松江市内で開いた常任幹事会では「共闘しないと勝てないのも事実」との声が上がった。

 17年衆院選では島根1区で共産が候補を取り下げて亀井氏を支援。鳥取2区は自民現職と過去4回、激戦を繰り広げてきた国民鳥取県連の湯原俊二副代表での野党候補一本化が予想され、共産鳥取県委員会の小村勝洋委員長は「勝つ可能性が十分にある」と話す。

 政権選択を有権者に問う戦いになる衆院選。国民島根県連の岩田幹事長は「小手先の数合わせに一生懸命になってもますます有権者が離れるだけ」と自覚する。

 民主党政権が崩壊したのは憲法や消費税増税など基本政策が一致しない「寄り合い所帯」だったことが一因で、今も有権者には不信感が残る。共闘の先にどのような政権構想を描くのか。批判だけでなく、自公政権に代わる対立軸を具体的に示せなければ、受け皿にはなれず、政権交代はますます遠のく。

2019年7月25日 無断転載禁止