世事抄録 静けさの功罪

 6月に開かれた大手自動車メーカーの定時総会では、頻発する高齢者による暴走事故を巡る質疑が目立ったと新聞で報じていた。

 事故現場では東京・池袋の親子が亡くなった事故をはじめ、人気のハイブリッド車をよく見掛ける。メーカーでは「販売好調が続き多くの車が使用されているからでは」という認識を示し、アクセルとブレーキの踏み間違い防止の後付け装置を年内に拡充する方針を明らかにした。

 痛ましい事故が起きるたびに、ハイブリッド車の静か過ぎる走行音が気になる。そばに来るまで気付かず、スピードを出して間近をすり抜け驚いた経験もある。

 すでに2008年には米国の視覚障害者団体が「安全性」から問題視し、国内でも同様の指摘が相次いだ。国土交通省は昨年3月から「車両接近通報装置」の搭載を義務化した。既に販売された型は20年10月から装備が義務となる。通報音はガソリン車と同程度の50~56デシベルとなっており、高齢者でも聞き取りやすい周波数にすることや走行音を消す機能の禁止が厳格化されている。

 事故を起こした車がハイブリッドとは限らず、原因もさまざまだと思うが、走行音が運転者の耳にどう伝わっていたかも重要のような気がする。エンジン音からは暴走を自覚できなかった例もあるのではないだろうか。耳から老いは進んでいく。

(出雲市・呑舟)

2019年7月25日 無断転載禁止