アキのKEIルポ フェデラー戦のセンターコート 特別な場所に変わる

 かつて日本でテニス大会といえば、何をおいてもウィンブルドンだった。テレビ中継の歴史も日本では最も古い。だからこそ今でも一定以上の年齢の選手たちは、ウィンブルドン出場を夢に見て、ここでの活躍を胸に期する。「聖地」「伝統と格式」、あるいは「ストロベリー&クリーム」-。この大会が連想するイメージも、人によってさまざまだ。

 まだ20歳そこそこだった錦織に、ウィンブルドンの印象を尋ねたことがある。その時に彼は「フェデラー」だと即答した。錦織がウィンブルドンを思い描く時、真っ先に頭に浮かぶのが、芝の上を軽やかに駆け、鮮やかにボレーを決めるフェデラーの姿だった。

 それから月日は流れ、錦織はフェデラーと10度の対戦を重ねてきた。戦績は3勝7敗。芝での対戦は一度きりで、ウィンブルドンでは今大会が初対戦となる。かつて畏敬の目を向けたフェデラーも、今や「対等とまでは言わないが、怖さはない」と思える相手であり、そしてフェデラーは「僕はケイのテニスの大ファンだ」と言った。

 そこが“聖地”と呼ばれるからでも、テレビ中継があるからでもない。錦織がフェデラーと戦うことの価値において、次戦のウィンブルドンのセンターコートは特別な場所となる。

(フリーライター・内田暁)

2019年7月10日 無断転載禁止