プロの目 フォア安定 終盤に勝負強さ 錦織 準々決勝で敗退

男子シングルス準々決勝でラファエル・ナダルと対戦する錦織圭。初の四大大会制覇はウィンブルドン選手権へ持ち越しとなった=パリ(共同)
 テニスの四大大会第2戦、全仏オープン男子シングルスで第7シードの錦織圭(日清食品)が準々決勝で敗れた。不安視されていたフォアが安定し、最終セットでの勝負強さを見せ、四大大会で初めて4大会連続で準々決勝に進んだ。一方、1週目に試合時間が長引き、全豪に続いて体力の消耗を招いた。元プロ選手が収穫と課題、芝の舞台・ウィンブルドン選手権への期待を示した。


収穫 冷静に勝ちきる力光る

 初の4強は逃したものの、昨年のウィンブルドン選手権以降、四大大会では4大会連続で8強入りした。元プロの坂本真一氏は「連続でシードを守っている。テニスの内容もいい」と述べ、格下の突き上げをはね返して準々決勝に進んだ点を評価する。

 今大会は3、4回戦とも勝負が最終セットにもつれた。先にブレークされる苦しい展開から逆転した内容に「どう戦ったら勝てるのかを知っている。長くトップ10にいる実力だ」と元プロの辻野隆三氏。劣勢でも慌てることなく、冷静に戦況を分析して勝ちきる力が要因の一つとみる。

 プレーでは今季のクレーの出来を踏まえ、フォアの不安定さが懸念されたが、大会に入るとウィナー(決定打)に加え、ラリー戦の組み立ての中で優位に立てるショットを左右に打ち分けた。

 辻野氏は「自信を持って打っていた。今大会でさらにフォアに自信を深めたのではないか」と分析。芝の大会を前に不安を払拭(ふっしょく)できたとみている。


課題 「1週目」の戦略が必要

 3、4回戦をフルセットで制し、勝負強さは示した。ただ取れそうなポイントを逃して長引き、十分な体調で2週目に臨めなかったのは反省材料だ。

 象徴的だったのが3回戦第2セット、ゲームカウント4-2の第7ゲーム、40-0からミスが相次いでブレークバックを許し、反撃のきっかけを与えた。4回戦では第2セットで6度のブレークポイントを握りながらも1度しか破れなかった。

 1~4回戦の合計試合時間はナダルより4時間以上長い13時間22分。男子国別対抗戦デビス杯の元監督、神和住純氏は「これではナダルに勝つのはかなり難しい。1週目の戦い方を見つめ直さないといけない」と注文する。辻野氏は「ネットプレーを増やすなど短いラリーで点を取る必要がある」と話す。

 準々決勝はミスをしてうつむき、時には膝に手を突いてうなだれる錦織の姿に坂本氏は「心の弱さが出た。勝ちにいくという雰囲気がない」と分析。どんな調子、相手でもフルセットを戦い抜くメンタルが必要とし「その覚悟ができていない」と厳しく指摘した。


ウィンブルドンに向けて リターンから主導権を

 昨年のウィンブルドン選手権は初めて8強入りした。辻野氏は「自信を持って挑める」と昨年とは違う心境とみる。他のサーフェスに比べて球足が速く、ビッグサーバーが優位とされる芝で錦織は苦戦を強いられてきたが「勝つチャンスがある」と言い切る。

 辻野氏は近年のウィンブルドンは球足が遅くなっていると指摘。そこで生きるのが錦織のリターン力。強力なサーブをカウンターで返し、ラリー戦の主導権を握りたい。

 バック側のバウンドの高いボールのリターンは力が伝わりにくく、身長178センチの錦織は特に狙われやすい。辻野氏は「弾みきる前に返すなど、対策ができればもっと上に行ける」と話す。

 第1サーブの確率を上げるとともに、芝で有効とされるサーブアンドボレーを増やすべきだと助言する。

 気になるのは全仏の準々決勝で何度もトレーナーを呼び、マッサージを受けた右肘周辺だ。神和住氏は「まずは体を休めてほしい」と願う。

2019年6月7日 無断転載禁止