良いも悪いもシェア/「共生」理念に課題解決を

山陰インバウンド機構代表理事 福井 善朗

 「シェアリングエコノミー」の波が、そろそろ山陰にもやってきそうだ。これは、乗り物、住居、家具、服など、個人所有の資産などを他人に貸し出す、あるいは、貸し出しを仲介するサービスのこと。近年ちまたを賑わせている「民泊」はその良い例で、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催を控え、増加の一途をたどるインバウンド(訪日外国人旅行者)による宿泊施設の需要に対し、受入強化に取り組む地方の期待は大きい。

 また、日本では規制があって普及していないが、世界的に有名なサービスのひとつ「Uber(ウーバー)」がある。これは、ユーザーがスマートフォンのアプリで現在地を知らせると、契約ドライバーが来てくれる配車サービスだ。今までタクシーが担ってきた「人を運ぶ」というサービスに革命をもたらした。

 欲しいものを購入するのではなく、必要なときに借りたり、他人と共有したりすればよい、という考えを持つ人やニーズが増えており、そのような人々と、所有物を提供したい人々を引き合わせるインターネット上のサービスが、注目を集めている。

 日本の観光地に目を向けると、昨今、さまざまな課題が浮上している。

 例えば、京都のオーバーツーリズムは深刻だ。ただでさえ、日本人旅行者や修学旅行生で賑わっている古都の街中へ、大勢のインバウンドが集まってきた。ガイドブックで紹介される有名な社寺や仏閣は、観光客であふれかえり、京都人の台所・錦市場は、なかなか前に進めない程にぎわっている。

 最近、京都の街中にお洒落なゲストハウス(簡易宿所)を多く見かけるようになった。一方で、京都ならでは風情を残す「町屋」は減少傾向にある。有識者からは「このままでは京都の伝統的な町並みが壊れてしまう」との指摘もある。

 観光スポット間を移動するための交通手段も、恒常的な課題を抱えている。市内を運行するバスは行き先別に系統が数字で示されていて分かりやすく、バス停ではバスの接近情報が表示され、待ち時間の目安が分かり、イライラしなくてもすむ。それでも混み過ぎたバスは問題が起きる。バスに乗れない市民からクレームが上がる。

 また、先日、朝のワイドショーが、栃木県・鬼怒川温泉を取り上げていた。かつて団体旅行で盛況を誇った大型の観光ホテルが、地元の銀行が破綻したのを契機に次々と廃業。その内のいくつかが取り壊されることなく負の遺産として残り、「廃墟」となってそびえ立ち、地元の住民は嘆いている。そんなストーリーだった。

 観光業で生きてきたわが身としては、暗い気分になった。ここに至るまでに解決する手立てはなかったのだろうか。ホテルだけの問題で終わらせるのではなく、地域で解決できることはなかったのだろうか。

 観光に「三方良し」の考え方はとても重要だ。「観光客」「観光事業者」「地域住民」の、いずれかが欠けても観光地は持続しない。そのためにはバランスを保つことが大事だ。

 シェアリングは、日本語に訳すと「分配」ではなく「共生」。イイことだけを分け合うのではなく、地域の課題も一緒に考えて解決していく。地域には、その為の理念と技術が求められている。

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 ふくい・よしろう 長崎市出身。1980年に近畿日本ツーリスト入社し、国内旅行部などを経て地域振興部を設立。着地型観光の「ニューツーリズム人材養成講座」を各地で運営した。2007年、角川マーケティングとの共同出資で観光開発会社ティー・ゲートの立ち上げに参加。13年に神奈川県観光担当課長に就き、16年から現職。

2019年5月19日 無断転載禁止