生活想像力

 1歳3カ月の孫娘の行動を見ていて、東京から赴任した記者に昔、言われた言葉を思い出した。「地方の人は生活想像力が足りない」。孫娘は、与えたおもちゃはすぐに飽き、ペットボトルやハンガーなどを見つけて遊び道具にする。外に出ると、階段やスロープを目指す▼その記者は、恵まれた自然や風土があるのに、それを楽しんだり活用したりせず、単なる景観にしている点が歯がゆかったようだ。都会並みの娯楽や消費経済に振り回されて「無い物ねだり」をする「待ちの姿勢」では何も変わらないと言いたかったのだろう▼消費経済に縛られる限り地方は苦しい。例えば厚労省が3月に発表した昨年の賃金構造基本統計調査では、フルタイムで働く人の平均月給は東京が約38万円(42.2歳)、島根は約25万円(43.6歳)。男性に限ると、約42万円と約27万円で、月15万円もの差がある▼いくら東京は家賃が高いとはいえ、地方は必需品の車に関する出費も多い。可処分所得の差を縮められるのは、家屋敷の心配がなく、米や野菜が自給に近い形で得られる人くらいだ。これ以上差が広がると、地方の人口減少対策の大きな障害になる▼この差を大幅に縮めるには国が本腰を入れないと難しい。が、待つだけでは解決しない。地方も風土を生かし、月15万円に負けない「暮らし」を描く想像力を養いたい。「想像」は「創造」にもつながる。(己)

2019年5月19日 無断転載禁止