心に残る祭り

 松江市内の堀川の両岸に幾重にも重なる人垣。ほんの数メートル先を行く櫂伝馬船(かいでんません)上で繰り広げられる櫂伝馬踊り-。1958(昭和33)年のホーランエンヤ(松江城山稲荷神社式年神幸祭)の映像が、同市殿町の松江ホーランエンヤ伝承館で公開されている▼約10分間のカラー映像で音声はない。しかし、無音ゆえ、「ホーランエーエ ヨヤサノサ」と独特な節回しを響かせる船歌、船上踊りの剣櫂(けんがい)や采振(ざいふ)りを見た観客の驚嘆など、幼いときに見た祭りのにぎやかさがよみがえる▼堀川を巡った最後のホーランエンヤだけに堀川沿いの風景が懐かしい。松江城山東側の北惣門橋から船に乗ったご神霊は、四十間堀川を通って京橋川へ。旧松江商工会議所ビル、日本銀行松江支店(現在のカラコロ工房)を過ぎると京橋、松江赤十字病院の円形病棟。ここのテラスも鈴なりの人だ。櫂伝馬船の宝珠柱を倒して橋をくぐる様子も映っている▼映像や写真を見ながら思い出を語り合う老年、熟年の同僚に、親の転勤で何度も住む県が変わったという一人が「心に残るお祭りがある人はいいですねぇ」と。言われて気付いたが、松江で生まれ育った身には鼕(どう)行列も水郷祭も懐かしい思い出だ▼今回も櫂伝馬船を繰り出す「五大地」をはじめ多数の人たちの努力で伝統がつながる。祭りの意味と意義をしっかり心に刻んでいきたい。ホーランエンヤは明日、渡御祭で始まる。(富)

2019年5月17日 無断転載禁止