世事抄録 「2019外交青書」を考える

 先日発表された外交青書で、2点が注目点としてマスコミ報道された。一つは北朝鮮に対する「最大限の圧力」という文言の削除、もう一つがロシアに対する「北方4島は日本に帰属する」という文言の削除である。この二つは内容において大きく異なるものであるが、共通するのは相手と交渉をする上での基本原則であったという点である。

 この基本の削除が、本紙のコメントどおり「この削除でそれぞれの国の態度を軟化させ、交渉を前進させる狙いがある」ということであれば、「取ってから譲る」を原則とする外交交渉において、交渉前から、相手の“軟化”という全くあてにならないものとの引き換えに、守るべき基本を早々と譲るのは、初手から日本の負けである。相手は、日本が勝手に開けてくれた大手門目がけ、ここを先途とばかりに一気に攻め込んでくるだろう。

 日本外交の拙劣さは指摘されて久しいが、その典型を見る思いだ。心配なのは、世界中の外交交渉をウオッチしている各国から、「日本は基本原則を易々と放棄・変更する国」であるとみられ、不信感が増すことである。特に「北方」については、国土の領有権の放棄と受け取られ兼ねないが、それでよいのか。

 最初の報道後、深堀りの追報がないが、看過できることではないと思う。

 (松江市・幸兵衛)

2019年5月16日 無断転載禁止