全うした「一途一心」

 「島根に戻ってどげなことができそうかいな」。前日もいつも通り和やかな笑顔だった。それが最後のやりとりになった。自民党参院議員の島田三郎氏が8日早朝、62歳で急逝した。取材で向き合った2年間でさまざまなことを教わった▼政治取材のいろはも分からず東京に赴任した当時、断りなくICレコーダーを回すと「許可を取るのがマナーだわな」とぴしゃり。時折もらった記事への指摘や取材の立ち回り方のアドバイスが今生きている。秘書として仕えた竹下登元首相が活躍した激動の昭和国会など、間近で表裏を見たからこそ語れる体験談を多く聞き、政治の面白さを知った▼体調悪化で昨年12月以降帰省できなくなった間、県知事選を巡り旧知の仲間が分裂。自ら調整役になり融和させたい思いと裏腹に体調は厳しく葛藤していた。「何とかできんもんか」。亡くなる前日もこぼしていた▼周囲の心配の声を聞きながらも参院本会議や委員会への出席は最後までやめなかった。座右の銘として選挙ポスターにも掲げた「一途(いちず)一心」を全うした▼人口減少に関する記事を読んでは「どげしたら良いんか」とため息をつき、島根の発展に何が必要か悩んでいた。次期参院選へは不出馬を決意。国会後に島根へ帰るのを楽しみにしていた。まだ教わりたいことがたくさんあった。今でも、事務所を訪ねれば和やかな笑顔が待っている気がしている。(築)

2019年5月14日 無断転載禁止