子育ての街

 来年夏の東京五輪・パラリンピックを前にした国立競技場や渋谷駅周辺の変わりように比べると、山陰では、目に見える形で街をつくり変えている現場は少ない。その分、地域を盛り上げようという志が感じられる空間に出合うと「何かが起こるかも」と楽しみになる▼出雲市多伎町もその一つだ。今年2月に、窓からの景色が美しい海辺の多伎図書館であった「多伎スタフェスティバル」でのこと。まちづくり対談やミニコンサートのステージと観客席の間に広い場所が設けられ、そこで幼児連れの家族が思い思いに過ごし、子どもたちが走り回っていた。「誰も話を聞いていなかったのでは」と対談に出た主催者に尋ねると、「こちらも緊張しないで話せる。それがいい」と承知の上の様子。子育て世代が楽しむことを最重視していた▼改めて地域を見ると、図書館や道の駅「キララ多伎」をはじめ、親子で楽しめる施設が多いのに気付く。子育て世代に配慮した蔵書選定やロビーの雰囲気づくり、トイレ整備などを徹底すれば、地域が持つ魅力により磨きがかかるだろう▼多伎は、妊娠から出産、子育てに関する公的サービスを一元的に受けられる拠点「ネウボラ」の発祥地・フィンランドとの交流歴が長い。知恵が借りられるのではないか▼折しも多伎へつながる高速道路が完成した。インターチェンジ周辺に「子育ての街」が登場する姿を思う。(万)

2019年4月21日 無断転載禁止