間違いだらけの「小さな拠点」/連結・循環・共進化で未来形へ

持続可能な地域社会 総合研究所所長 藤山 浩

 全国の中山間地域で「小さな拠点」づくりが展開されている。筆者は、2000年代初頭から基礎的な生活圏への複合拠点である「郷の駅」の整備構想を唱え、国の「小さな拠点」関係の委員会へも当初から参画しており、各地域の取り組みに注目している。

 ただ、実際に「小さな拠点」の政策や活動を調べてみると、「何でもかんでも」「ナンチャッテ」が目立つ。つまり、行政担当者や現場関係者の多くは「小さな拠点」が本当は何を目指しているかよく分かっていないまま、従来の発想で進めてしまっているのだ。

 「小さな拠点」は「霞が関」としては、恐らく初めて「小さな」という形容詞がついた地域政策である。今までの大規模・集中志向の課題解決策とは一線を画している。「小さな拠点」が目指すべき新たな地平を、手法論・進化論・支援論の3つの観点から論じてみたい。

 まず「小さな拠点」が目指すべき手法は、地域ぐるみで分野を横断した「連結」である。単独決算では持続しえない個別分野を大胆につないだ経営手法(例えば、複合的な事業体や雇用、空間利用、共同輸送など)により、地域全体としての「連結決算」を黒字にする「範囲の利益」の創出が求められている。

 例えば、私の研究所が開発した地域ごとの介護費用の比較分析プログラムでは、高齢者の出番や役割を積極的に創っている地域が、大きく介護費用を浮かせていることが分かり始めている。その額は、300人程度で3千万円前後の減となった事例もある。このような今までにない異分野間の「新結合」を地元で創ることが「小さな拠点」の革新的手法なのだ。

 次に「小さな拠点」は、現状の課題への対症療法に留まらない進化の可能性を有している。これからの20~30年間で、時代は循環型社会へと向う。2020年代から本格化する3つの革命、すなわち「再生可能エネルギー革命」「シェアリングエコノミー革命」「IoT革命」は、いずれも条件不利とされてきた農山漁村において、小規模・分散・複合化・近隣循環に基づく「共生循環圏」を新たに生み出す強力な追い風となっているのだ。

 「小さな拠点」は、この循環型社会の「細胞」とも言うべき基本圏域の「核」としての役割が期待される。例えば、地元のバイオマスの熱電同時供給エネルギープラントでチャージされた、自動運転のマイカーならぬアワーカーがシェアリングされ、人もモノもリアルタイム情報により最適化され最小のコストで輸送するような未来の結節拠点が見えてくる。

 新たな手法や未来に向けた進化を支える「小さな拠点」の支援のあり方は、どうあるべきなのか。今までの大規模・集中志向の時代のように、発想も資源も技術も資金も、外部から、特に中央から投入するやり方はあり得ない。地域現場において自由な発想のチャレンジを同時多発的に展開し、現場のエビデンスに基づき見出された共通の課題や可能性を地域政策として結晶化させると共に、地域同士の学び合いのネットワークで共進化を図る「マス・ローカリズム」と呼ばれる手法こそ、本命である。

 現在、こうした「小さな拠点」の現場発のネットワーク的進化を展開するのは、全国で唯一、高知県だけである。地域支援企画員と呼ばれる県職員を地域内外のネットワーカーとして60名以上現地駐在させ、「集落活動センター」と呼ばれる高知県版「小さな拠点」をこの7年間で全県49カ所まで増やしてきた。

 以上のような未来志向により「小さな拠点」が各地域で形成される時、「今だけ・自分だけ・お金だけ」が横行する新自由主義的「競争社会」において、貴重な「共生社会」を支える定住と循環の砦(とりで)となる。人生100年時代、稼ぐために暮らすだけでは全うできない。

 お互いが幸せに生きるために、記憶と風景を刻み紡いでいく共生の土俵として、改めて「地元」を創り直したいものだ。「小さな拠点」は、そうした新しい持続可能な「地元」の核を創ることなのだ。

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 ふじやま・こう 1959年、益田市生まれ、一橋大学経済学部卒業。博士(マネジメント)。国土交通省国土政策局「国土審議会 住み続けられる国土専門委員会」委員他、国・県委員多数。今夏に「小さな拠点をつくる」(農文協)を発刊予定。

2019年4月15日 無断転載禁止