管理栄養士を育てる意義/少子高齢化に立ち向かう

島根県立大出雲キャンパス副学長 山下一也

 なぜパンダはササだけで筋骨隆々の身体になり、コアラもユーカリしか食べなくてもかわいい体つきになれるのか? 理由は、体の中にそれらの動物が持っている特殊な酵素により、筋肉やビタミンに変換できるようになっているからである。しかし、人間にはないので、多種多様な食事が必要になり、栄養・食事の重要性がある。

 かつて、日本人は食糧不足や主食偏重の食生活のために、各種の栄養失調に悩まされていた歴史がある。しかし、その後の経済状態や食糧事情の好転、さらに栄養教育の普及により栄養状態は大きく改善した。

 すなわち従来の日本食に、高エネルギー・高脂肪の欧米食が導入され、多くの栄養失調は解決し、さらに体格も非常によくなった。しかし一方では、近年、肥満、脂質異常症、高血圧、糖尿病、動脈硬化などの生活習慣病が増大してきた。その理由として過剰栄養や食品選択の偏り、さらに不規則な食生活が挙げられている。

 世界でも栄養士が配置されている国は先進国を中心にまだ約半分にも満たない。その中でも、日本の医療現場では管理栄養士の役割が次第に大きくなりつつある。

 すなわち、チーム医療が現在の医療の基本をなしており、メディカルスタッフ(医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士など)としてそれぞれの役割を果たしている。その中でも栄養サポートチームは管理栄養士が中心になって、入院、外来、在宅の医療で患者の栄養管理をチームで行う多職種連携体制である。最近この方式による栄養管理により、在院日数の短縮や在宅医療の充実が明らかになりつつある。

 島根県立大出雲キャンパスでは、2018年4月に看護栄養学部になり、4年制の健康栄養学科において山陰唯一の管理栄養士の養成課程を設置することになった。その教育の特徴の一つが栄養学生と看護学生との合同講義や演習などである。特に、今年から「しまねの地域医療」という両学科の学生が島根県各地で健康課題となっている問題点に合同で取り組む学習がある。

 これにより学生時代から、多職種の連携の意義を知ることができ、チーム医療を学べることにもなる。さらに今年の夏からは栄養学では、最先端の地である米国にも異文化研修を合同で行う。米国の栄養士は、医師、看護師などとともに独立した専門職として、医療以外でもスポーツ栄養士、栄養・食品・薬品関係会社などさまざまな職種に就業し、活躍している。

 また、根拠に基づいた栄養学としての研究も高いレベルを維持している。このような状況を両学科の学生が認識することが合同での異文化研修の目的である。

 高齢者の栄養はフレイル(高齢者の身体機能や認知機能が低下して虚弱となった状態)と関連し、小児の食育はその後の人生に大きな影響を与える。つまり、島根県の課題の少子高齢化に立ち向かうには保健・医療・介護の分野において、栄養や食事を重要な課題として取り扱っていく必要がある。そのためにも島根県立大出雲キャンパスでは、島根県内のあらゆる地域で活躍できる管理栄養士を多く輩出し、県民のニーズに応えたいと思っている。

 …………………………

 やました・かずや 医学博士、専門分野は神経内科、神経心理学。島根医大医学部卒業後、1991年にカリフォルニア大学デービス校神経科研究員として留学。94年から津和野共存病院院長、その後、島根医大付属病院第3内科講師、島根県立看護短大教授などを経て、2012年4月から島根県立大出雲キャンパス副学長。

2019年1月20日 無断転載禁止