アキのKEIルポ ブランド力が生んだ勝利

 錦織圭が初めて戦ったトップ10の選手は、元世界1位のアンディ・ロディックだった。サンノゼ大会の2回戦。ドローを見た瞬間から錦織は、その実現を心待ちにした。

 だが実現した一戦で、ロディックは“口撃”をも絡めて錦織を精神的に揺さぶっていく。動揺を隠せず敗れた彼は、試合後のロッカールームで、悔いと傷心交わる涙を流した。18歳の日のことである。

 それから10年以上の月日が流れた。今回の全豪がグランドスラム初出場のカミル・マイクシャクにとって、錦織は初めて対戦するトップ10選手である。「若い頃からテレビで見ていたすごい選手」。マイクシャクは錦織との対戦に、胸の高鳴りを覚えていた。

「こんなに良いテニスをしたことがない」

 錦織から2セットを奪ったプレーを、23歳のポーランド人はそう述懐した。だが直後、彼の右手は痙攣(けいれん)に襲われる。アドレナリン噴き出る極限状態で起きたハプニング。第5セット途中で棄権したマイクシャクは、母国の報道陣に「精神的に限界だった」と漏らしたという。

 錦織にとっては僥倖(ぎょうこう)であり、薄氷を踏む辛勝だったのは間違いない。だがそれは、積み重ねた実績に根ざす“錦織圭”のブランド力が生んだ、必然の勝利でもある。

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 錦織取材を続けるフリーライターの内田暁さんが、メルボルンから報告する。

2019年1月17日 無断転載禁止