山陰の魅力や強み/外国人の視点で再評価を

山陰インバウンド機構代表理事 福井 善朗

 2019ラグビーワールドカップがいよいよ日本にやってくる。前回大会で旋風を巻き起こした「桜のジャージー」の活躍はもちろん楽しみだが、大会を通じて一番の話題はニュージーランド代表(オールブラックス)の3連覇だろう。

 黒の一団は試合前から圧倒的な存在感を示す。全員が隊形を整えて舞う「ハカ」はマオリ族の出陣の踊りがルーツだ。足を激しく踏み鳴らし、爬虫(はちゅう)類のように舌を突き出し、そして、強くリズミカルにたたかれる体が次第に赤く染まってゆく。彼らの国に対する誇りを痛感する。

 昨年、山陰インバウンドアドバイザーに3人の在日外国人が就任した。日本の文化、歴史、文化に詳しいジャーナリストのネットワークで、これまでも鳥取県から島根県まで何度も訪ねてきてくれた。

 私が彼らに期待するのは、既存の観光地のPRではなく、外国人の「視座」からの山陰観光の再評価だ。ちなみにそうした地道な活動が評価され、そろって観光庁の「専門家」にも認定された。

 その一人、英国出身のポール・マーティン氏は世界中にネットワークを持つ日本刀の検定家だ。空手の有段者でもある。最初出会った時は日本通の外国人ぐらいに思っていたが、「高倉健」ネタで盛り上がった松江での一夜から見方が変わった。

 単なる健さんファンではなかった。むしろ彼がこだわっていたのは健さんが抱える「長ドス」の方、日本刀に日本人のルーツを感じていることが何となく分かってきた。そこから「たたら」に始まる私のつたない説明が延々始まり、ついには日本刀の生い立ちを追って隠岐の島まで訪ねた。

 外国人向け日本語情報サイト「GaijinPot」の19年外国人が訪れるべき日本の観光地ランキングの第1位に鳥取県が選出された。サイトの運営会社によれば、編集方針は「外国人が最も欲しい情報をタイムリーに、そして彼らの視点で提供することが重要」とのこと。その点では、鳥取のどこに他県にはない魅力を感じているのかをはっきりさせることが今後に向けた重要な課題だ。観光地の情報をやみくもに発信するのではなく、彼らが欲しいと思っている情報を的確に伝え続けていくための工夫も必要になってくるだろう。

 「観光」の語源は中国の教典にある「(他)国の光を観ること」の記述だと言われている。ここでの光とは文化、政治、経済を含め国力全般だ。自分たちの魅力や強みは意外と自分たちでは気付かない。むしろ、外からの方が良く見えることがある。自分たちの魅力を声高にアピールするだけではなく、他者からどう見えているかを十分踏まえた上で、誘客に取り組んでいくべきだ。

 「山陰プライド」を見つける覚悟はあるか、来年はその度胸が試される年になりそうな予感がする。

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 ふくい・よしろう 長崎市出身。1980年に近畿日本ツーリスト入社し、国内旅行部などを経て地域振興部を設立。着地型観光の「ニューツーリズム人材養成講座」を各地で運営した。2007年、角川マーケティングとの共同出資で観光開発会社ティー・ゲートの立ち上げに参加。13年に神奈川県観光担当課長に就き、16年から現職。

2018年12月23日 無断転載禁止