松江シティ 就任3季目 田中監督 攻撃的サッカー確立

厳しい表情で選手に指示を出す田中孝司監督(左)。攻撃的サッカーを築き上げた=千葉県市原市
JFLで磨き さらに上へ

 松江シティFCの来季の日本フットボールリーグ(JFL)昇格が正式に決まった。ボールを保持しながら主導権を握る攻撃的サッカーを築いたのが、就任3季目の田中孝司監督。かつてU-20(20歳以下)日本代表やJ1クラブを率いた指揮官は世界的な名将らから刺激を受け、シンプルで楽しいサッカーで地域リーグを席巻した。今季のスタイルを継続すればJFLでも戦える力を秘める。

 「松江が目指すスタイルをつくりたい。協力してほしい」。2015年12月、松江シティの鈴木恵朗社長が、Jリーグでの指導経験が豊富な田中氏に監督就任を打診した。

 J経験者が多い半面、個の力に頼りがちでJFL昇格を逃したばかりで、昇格や将来のJ参入にはチームとしての形が必要とみたからだ。

 「どうせ勝つなら楽しくないと」。田中監督は、勝つために守りのブロックをつくってカウンターを仕掛けるのではなく、ボールを動かして主導権を握ることが選手や観客を引きつけると考えた。

 田中監督が影響を受けた一人が、英プレミアリーグの強豪・アーセナルを22季も率い、3度のリーグ優勝に導いたアーセン・ベンゲル氏だ。同氏がJリーグ名古屋の監督を務めた1995、96年にコーチとして支えた。

 難しいプレーでミスすることを嫌い、パスをつなぐシンプルな形で攻めるベンゲル氏のサッカーを「一緒に指導していて楽しかった」と回顧する。

 松江シティでも「止める」「蹴る」といった基本を大事に、フリーの選手やスペースを生かした攻めを徹底。フリーの選手を使わなかったり、相手の多いエリアにパスを出したりすると「何でそんなことするんだよ」と厳しい声を飛ばした。

 シーズンを重ねるごとに浸透し、在籍5年目の田平謙主将は「やりたいことができるようになってきた」と振り返る。成熟度を実証したのが6月の天皇杯2回戦のJ1長崎戦。延長の末、1-2で敗れたが、前線からプレスをかけてボールを奪い、パスワークで優位に立つ時間帯もあった。田平主将は「このままでいいんだ」と自信をつかんだ。

 JFL昇格が懸かる11月の全国地域チャンピオンズリーグ決勝ラウンドでシティに1-2で敗れたJ.FC MIYAZAKIの与那城ジョージ監督は「何もできず90分が過ぎた」と脱帽した。

 「楽しいサッカーをやりたくて松江に来た。ほっとしている」。最終戦に勝ち、昇格を決めた田中監督が顔をほころばせた。

 JFLは対戦相手のレベルが上がる。決定力など課題も残すが、積み上げた松江のスタイルを磨くことが重要になる。

2018年12月8日 無断転載禁止