(118)谷戸経塚(川本町)

大量の経石が見つかった「谷戸経塚」
2個の甕に大量の「経石」

 一級河川・江の川にほど近い川本町谷戸(たんど)地区の道路脇に、お経が書かれた大量の河原石が埋められた「谷戸経塚」がある。石碑もあり、1819(文政2)年5月、町在住の丸吉兵衛によって建立されたことが分かる。江の川での舟運の安全を祈願したなどと考えられており、川とともに暮らしていた往時の様子がうかがえる。考古学や仏教民俗学的に貴重な資料とされ、1979年に第1号の町有形文化財に指定された。

 詳細が分かったのは、町教育委員会が78年に行った発掘調査。経塚から2個の甕(かめ)が見つかり、中に計6万点余りの河原石が納められていた。石はいずれも指頭大で、平面に一字ずつ法華経が書かれていた。「経石」と言われるもので、全て同筆の書体だった。

 さらに注目を集めたのが、経石が入っていた2個の甕。その後の調査で、江戸時代後期に作られた石見焼の甕であることが分かった。石見焼の生産の歴史を知る貴重な資料で、現在、県立古代出雲歴史博物館(出雲市)に保管されている。

 経塚はもともと、現在の場所から江の川方向に約30メートル進んだ場所にあったが、近くの道路の改修工事に伴い、87年に移設された。移設場所の土地を所有する松本定男さん(78)は「時折、見学に訪れる人がいる」と話す。今夏の西日本豪雨で水に漬かったが、壊れるなどの被害はなかったという。

 今月中旬、取材で現地に足を運んだ。安穏な生活への願いも込められているのだろう。古人に思いをはせ、石碑に向かって手を合わせた。

2018年9月20日 無断転載禁止